格差の広がりは問題だと思うが、対処方法は思いつかない。

僕の大学時代の友人にAさんという人がいる。

彼は父親の仕事の都合で中学校までロンドンで育ち、帰国後は帰国子女クラスで学習を続けていたこともあり英語はほとんどネイティブ スピーカーと変わらないレベルで話すことが出来る。

友人との時間や趣味の時間を大切にしながらも大学での勉強もしっかりこなしており、大学卒業後は外資系の中でも特に難しいと言われ る某コンサルティング会社に就職、3年ほど働いた後、社費留学生としてMBA取得のためにアメリカの最難関大学院の1つに留学中だ。

彼は単純なお金儲けにはそれほど興味が無いようだから数千万~数億円といった年収を稼ぐような職種には就かないだろうけれども、今後も「自分の能力を精一杯発揮して社会に貢献する」というシンプルながらも素晴らしい彼のモットーを実現すべく懸命に働きおそらく最低でも年収1千万円程度は稼ぎ続けることだろう。

彼は留学直前に学生時代から付き合っていたこれまた優秀な女性と結婚しており、きっと彼らの子供も両親と同じように海外の学校か、 もしくは日本の私立中学・高校でしっかりとした教育を受けていくだろう。

ちなみに彼は性格も爽やかな本当に良い人であり、個人的にも大好きな友人の一人である。

一方、もう会って話す機会はないだろうが、生まれ育った地元には20代後半にしてずっとアルバイトを続けているBさんがいる。

年収は300万円に届くか届かないかくらいで生活するには厳しそうだけれど彼らはたいてい実家に住んでいて生活コストが安いのであと10 年くらいは特に問題なくそのまま生活できるだろう。

しかし、そこから先はなかなか苦しいように思える。

今まで世帯の生活費の大半を稼いでくれていた両親は高齢化に伴い、自然と治療や介護でむしろ出費を必要とする側に回っていく。

彼自身は職場に毎年入ってくる若いアルバイトと段々話が合わなくなってストレスを抱えたり、力仕事による日々の疲れが取れにくくなっていることに気づき始める。しかし30代後半、40代にして正社員経験がない人を正社員として雇ってくれる会社がどれほどあるだろう
か。

また長年住んでいる自宅も徐々にリフォームが必要になってくるが、数百万円かかるリフォーム代を払ってしまっては貯金が無くなってしまうので巨大地震が来ないことを願いながら住むことになるかもしれない。

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こうして、いったん出来上がってしまった格差構造はそう簡単にひっくり返せないようになっていく。

Aさんの子供は勉強の重要性を知っている両親に薦められ、小学校4年生からSAPIXに通い、難関中高、難関大学、そして士業もしくは大企業に就職する。金融リテラシーの高い両親の教育で毎月の給料の一部は株に投資するようにしており、おまけに住宅資金の頭金は両親から贈与されたことで資産価値が落ちにくい一等地の不動産を無理のない範囲のローンで購入することが出来る。

一方、Bさんの子供はそもそも両親が教育の重要性を理解しておらず、月に何万円もかかる塾に通わせてもらえない。そこそこに勉強して 地元の中高に進学した後、両親と同じようにアルバイトすることになる。株式投資に回す余裕資金はないのでいつまでたっても労働者側 から資産家側に近づくことが出来ない。

最近危惧しているのはAさんとBさんのように生活スタイル、職種、そして思考そのものが異なる人々の間で年々交流がなくなっているのではないかということだ。

どちらかと言えばAさん側にいる自分も地元に帰るたびに実感することだが、とにかくお互いに話が噛み合わないのだ。

GWのヨーロッパ旅行で訪れたレストランが美味しかった話、米国株が好調すぎて投資タイミングを測りかねている話、先週読んだリンダ ・グラットンのライフシフトが傑作だった話、友人の結婚式に出席するために秋にハワイに行く話。

僕が話したい話題はたいてい彼にはまったく響かない。

反対に彼が話してくれる車の話、パチンコの話、ソーシャルゲームの話、芸能人の話にはまったくついていくことが出来ない。何しろ僕の自宅にはテレビすらないのだ。

こうして会話が噛み合わなければお互いに会う動機が薄れていき、友人関係はどんどん似た者同士で固まっていくようになる。

さらに結婚ですら似たような人同士が結婚することが多くなることで、父親はAさん寄りだけれど母親はBさん寄りといったことすらなくなっていく。

こうなるともう子供同士は小学生時点で会話が噛み合わない。

こうした傾向が進みすぎたアメリカでは既存エリートに反発する票がトランプ氏に流れ込み、奇跡の当選を果たしたものの、政治プロセスの基礎すら分かっていない彼は無駄に共和党に敵を作ってしまい、公約をほとんど果たすことが出来ていない。先日発表された彼の予算教書を見てみるとメキシコの壁建設に公的医療保険の削減など率直に言って醜悪な計画しか作ることができていない。

あれが将来の日本、いや世界の姿かと思うと実に恐ろしく、また悲しい話である。

個人的には一定の資産を保有する高齢者への社会保障を打ち切り、その分公的教育分野に多額の資金を投入するなどしてなんとか教育水準を全国一律で高いレベルで合わせようと努力することで人々の間に存在する格差を解消しなければいけないと考えているが、
・どの政党も母数が多く投票率も高い高齢者層にダメージのある政策を掲げない
・そもそもそんなにハイレベルの教育を長年に渡って受けたい意欲のある人は少数派
といった理由から格差が解決する気配は一向にない。

戦争の世紀と言われた20世紀に続き、21世紀は格差に対する反乱の時代とならないことを祈るばかりだ。

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